校正こぼれ話⑤たまご納豆と表記

「ご飯に納豆と卵をかけて食べると美味しい。」

「ごはんに納豆と玉子を掛けて食べるとおいしい」

日常のありふれたような会話も、つい校正者の頭の中では複数の表記パターンを考えてしまいます。職業病です。

最近、中学生の娘が好んで食べているたまご醤油だれの納豆パッケージを見ると、「ひらがなもやさしい感じが出ていいな」と思います。

校正者がボロボロになるほどめくる本に、共同通信社の記者ハンドブックがあります。おそらく最も一般的で広く使われている表記ルールについての本で、それによると「玉子」ではなく「卵」、「美味しい」ではなく「おいしい」と表記が定められています。

老若男女、幅広い読者にとって読みやすい新聞のような文章に整えるときに、このルールを使用することが多くあります。自社の表記ルールを細かく定められているお客様もいらっしゃいますが、表記ルールはおまかせという場合、これを基準として校正をしています。

また、洋洋社では、どんなに短い文章でも、必ず二人の校正者がダブルチェックの対応をしています。その理由は、一人では抜け漏れの可能性があることももちろんですが、Aさんにとって読みやすくても、Bさんにとって読みやすいとは限らないからです。例えば日頃からExcelを使っているAさんにとっては常識の関数も、あまり使ったことがないBさんにとってはチンプンカンプン。AさんとBさんが読むことで、Excelに詳しい人にもそうでない人にも分かりやすい文章に変えることができます。一人で2回読むのではなく、二人読むほうがよほど効率良いチェックになります。

冒頭の文章、たまごは「玉子」のほうがしっくりくるという方も、そもそも納豆に玉子をかけるなんて邪道!という方もいらっしゃるでしょう。私の友人のオーストラリア人のご主人は納豆について、「まさに男の足のにおいがするありえない食べ物」と言っていました。それは置いておくとしても、一文が読者に与える印象はさまざまです。

どんなに優秀な方でも一人で複数の視点を持つことは難しいものです。その視点をご提供できるのが、校正者だと考えています。企業として恥ずかしくない文章にしなければ、と読み返して推敲する時間を取っていらっしゃるならば、ぜひ一度ご相談ください。